近年、企業の持続的成長に向け、従業員の健康を重視した健康経営が注目されています。その取り組みを可視化するのが、健康企業宣言における「銀の認定」と「金の認定」です。銀の認定は健康診断や生活習慣改善などの基礎的な健康管理を評価し、金の認定は過重労働防止やメンタルヘルス対策などの包括的施策を対象としています。これらの両認定の基準やメリット、チェックシートの活用法や申請手順を含め、取得に向けたステップを詳しく解説します。
健康企業宣言における銀の認定・金の認定とは、経済産業省による健康経営優良法人認定制度の一環として位置づけられ、企業の健康経営への取り組みを評価・認定する制度です。従業員の健康増進と企業の生産性向上を目指す取り組みを促進するために設けられました。
銀の認定は、健康経営の初期段階にある企業を対象とし、基本的な健康増進施策や健康診断の受診率向上が評価基準となります。一方金の認定は、銀の認定を取得した企業がさらに高度な健康経営施策を実施し、その効果を測定・改善している場合に与えられます。企業は段階的にこれらの認定を取得することで健康経営のレベルを向上させることができます。全国健康保険協会(協会けんぽ)や各都道府県の商工会議所、関東ITソフトウェア健康保険組合などが運営し、中小企業でも対象となるなど、企業の規模や業種を問わず健康経営を推進したい企業であれば申請が可能です。
銀の認定は、企業が健康経営を推進する第一段階として位置づけられ、従業員の健康維持と生活習慣改善を目的とした基本的な取り組みが求められるものであり、企業が健康企業宣言の方針に基づき、具体的な健康管理施策を実施していることを示す基準となります。比較的短期間で取り組みやすい内容が多く、健康経営の基盤を確立するのに適した認定です。以下のような施策が評価対象になります。
【従業員の健康診断受診率向上】
・健康診断の受診率80%以上の達成
・40歳以上の従業員の健診結果を健康保険組合へ提供し、適切なフォローアップを実施
【健康増進のための施策】
・従業員の食生活改善や運動習慣の推進
・健康づくりの担当者を決定し、健康管理を推進
・健康測定機器(血圧計など)の設置
【禁煙対策の推進】
・受動喫煙防止のための職場環境の整備
・禁煙支援プログラムの導入
【メンタルヘルス対策の実施】
・ストレスチェックの導入と相談窓口の設置
・従業員が気軽に健康相談できる環境の整備
金の認定は銀の認定の取り組みをさらに発展させ、企業全体の健康リスク管理と組織的な健康経営の実施状況を評価するもの。より包括的で戦略的な施策の実施が求められます。健康経営を組織的・計画的に推進し、企業全体の健康管理体制強化を目的としています。企業が従業員の健康を守るために、経営戦略の一環として健康施策を位置づけることが求められ、主な評価項目は以下の通りです。
【健康管理の高度化】
・健診結果の分析と従業員へのフィードバックを強化
・特定保健指導の実施率改善と受診促進
・健康経営推進のためのPDCAサイクルの確立
【メンタルヘルス対策の強化】
・メンタルヘルス対策に関する計画策定と従業員への情報共有
・ストレスチェック結果の活用とフォローアップの強化
・休職者の職場復帰支援体制の整備
【過重労働対策とワークライフバランスの推進】
・時間外・休日労働時間の管理体制を確立
・月80時間を超える時間外労働者への個別支援実施
・年次有給休暇の取得促進と長時間労働の抑制
【経営層の関与と健康経営の発信】
・経営者による健康企業宣言の発信
・健康経営の計画策定およびその実施状況の報告
・社内外への健康経営に関する情報発信と取り組みの公表
申請のおおまかな流れは、銀の認定の申請と金の認定の申請ともに同じです。ただし制度の運営団体によって必要な申請書類が異なる場合があるため、必ず運営団体に確認のうえ申請を行ってください。協会けんぽ運営を例にした申請の流れは以下の通りです。
・経営者が健康経営に取り組む方針を宣言する「応募用紙」を提出
・6ヶ月以上の期間をかけ、「チェックシート」にある認定基準の各項目に対する施策を実施
・上記の取り組み状況や成果を「実施結果レポート」と「実績説明シート」に記載して提出
・金の認定の申請を行う場合には、労働基準法等の法令遵守や認定後に貸与されるロゴマークの使用規定についての「誓約書」の提出も必要
・提出内容をもとに認定基準を満たしているかを審査
・認定を取得した場合には、健康優良企業ロゴマークが貸与される
・認定の有効期間は1年間が基本で、毎年更新手続きを行うことで期間が延長される
※金の認定は3年ごとに再審査が行われる

銀の認定や金の認定の取得を通じて、企業は従業員の健康意識を向上させ、職場環境の改善を促進できます。具体例としては健康診断の受診率向上、メンタルヘルス対策、運動促進プログラムの導入などによって従業員の健康リスクを低減し、病欠や長期休職を防ぐことが可能です。特にストレスチェックの実施や産業医との連携を強化することで、従業員の心身の健康を総合的にサポートできます。
さらに、健康経営を推進することで経営者の意識が変化し「従業員の健康が企業成長に不可欠である」と認識されるようになるのも大きなメリットのひとつです。経営層が積極的に関与することで、組織全体として健康維持を重視する文化の醸成にもつながります。
銀の認定や金の認定を取得すると、企業は健康優良企業ロゴマークを自社の広報活動に活用できるようになります。このロゴマークは、ウェブサイトやパンフレット、求人広告、名刺などに掲載可能で、健康経営に積極的な企業であることを示す証となります。
特に求職者にとって働きやすい職場環境の指標となり、優秀な人材の確保に有利に働きます。ワークライフバランスを重視する求職者が増加傾向にある中、健康経営に取り組む企業は長く安心して働ける企業として評価されやすくなります。また、取引先や顧客に対しても従業員の健康を大切にしている姿勢を示すことができ、企業の社会的信頼性やブランドイメージの向上につながります。
銀の認定や金の認定を取得することで、企業は従業員の健康管理を強化し、経営リスクを軽減できます。特にメンタルヘルス対策を充実させることで長期休職や退職のリスクを抑え、人材の流出を防ぐ効果が期待されます。また、過重労働の防止や適切な労働時間管理を推進することで労働災害や健康被害のリスクも低減できるため、結果として安定した経営基盤を築くことが可能となります。

銀の認定を取得するためには、健康診断の受診率80%以上を達成し、健診結果を適切に提供することが求められます。しかし繁忙期やシフト制の職場では全従業員がスムーズに健診を受けることが難しく、受診率向上には個別の調整や柔軟な対応が必要です。また、健診結果に基づく特定保健指導の受診促進や要医療者へのフォローアップも必要となり、担当者の負担が増加します。
さらに、健康測定機器の導入やストレッチスペースの確保など健康づくりのための環境整備にはコストがかかります。企業として健康経営を推進するには、従業員の意識向上を図る施策を継続し、健康への関心を維持するための工夫も必要です。施策の効果を測定しながら適宜改善を加えていく必要もあるため、定期的な評価とフィードバックの体制構築も重要なポイントとなります。
金の認定では、銀の認定よりもさらに高い基準が求められます。健診受診率の向上や有所見率の改善などの具体的な成果に加え、従業員の家族(40歳以上の被扶養者)への特定健診受診促進も必要になります。この場合、社内での周知だけでなく従業員の家族にも健診への理解を促すための情報共有の仕組みづくりが課題となります。
また、メンタルヘルス対策の充実が求められているため、ストレスチェックの実施や休職後の復帰支援体制の整備といった計画的な取り組みが不可欠です。専門知識を持つスタッフや外部リソースを活用する必要があり、企業内での体制構築が重要になります。過重労働防止策としては時間外労働の上限管理や長時間労働者への支援、有給休暇取得率の向上が求められるため、勤怠管理のシステム導入やシフト調整が必要となる場合もあるでしょう。
加えて、認定を受けるためには、経営者自身が自社の健康経営の取り組みを社内外へ発信する役割を担う必要があります。特に中小企業では経営者の時間的・人的リソースの制約があるため、効率的な取り組みが求められます。

銀の認定・金の認定を取得するためには、チェックシートを活用して現状を把握し、計画的に施策を進めることが重要です。認定基準は点数制となっており、各評価項目の実施状況を点数で評価し、合計80点以上を満たすことで認定を取得できます。チェックシートでは自社の現状をもとに採点を行うことができるため、取り組みが不足している施策を明確にすることが可能です。特に銀の認定から金の認定へステップアップを目指す場合、どの施策が強化の対象となるかを把握するうえで有効なツールとなります。
全国健康保険協会(協会けんぽ)では、健康企業宣言に関する参考資料やリーフレットを提供しています。 これらの資料には健康診断の重要性や生活習慣病予防のポイントがわかりやすくまとめられており、従業員やその家族への周知や啓発活動に役立ちます。厚生労働省も過重労働による健康障害防止のための総合対策をまとめた資料を公開しており、過重労働防止策の策定や実施に活用できます。
健康保険組合連合会では、食生活の改善や禁煙対策に関しても、職場における健康づくりの手引きとして、食生活改善のための具体的な施策や禁煙推進のためのガイドラインを公開しています。どのような施策を導入すればよいかわからないときなどにも助けになります。
コストはかかりますが、取り組みの負荷を軽減するために外部サービスを活用することも効果的です。特に金の認定においては、健康診断における有所見率の前年比較やストレスチェックの実施が評価項目として設定されているため、健診結果のデータ化をサポートするサービスや、ストレスチェックの実施から分析までを一括でシステム化するサービスなどを活用することで、施策の運用負荷を大きく軽減することができます。

執筆者 中川栞|株式会社スナックミー ライター・エディター
Web制作会社の管理職としてライターの指導・教育に従事したのち、株式会社スナックミーでコンテンツ制作を手掛ける、おやつライター兼エディター。安心・安全の「おやつ時間」の楽しみ方や、暮らしや職場におやつがある日々の豊かさ、福利厚生置き菓子の魅力を軸に、自社オウンドメディア『snaq.me magazine』の記事や商品パッケージのコピーライティングなどを担当。好きなおやつは『スナックミーのやさしいキャラメル』と『キングソロモンデーツ』。
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