WELL認証とは?評価項目や取得企業、福利厚生でできる取り組みまで解説  

2026/9/7

ミーティングスペースで打ち合わせをする社員たち

人的資本に関する情報開示が進み、従業員の健康を「コスト」ではなく「投資」として捉える企業が増えています。そうした流れのなかで関心を集めているのが、働く人の健康とウェルビーイングという視点から空間を評価する「WELL認証」です。

一方で、「大がかりな工事が必要そう」「建物の話だから人事や総務には関係がない」と感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。実際にはWELL認証の評価項目には、日々の運用や社内制度に関するものも含まれており、福利厚生の内容が関わってくる場面もあります。

本記事では、WELL認証の概要と10のコンセプトごとの評価項目、認証ランクと取得までの流れ、日本国内の取得事例をまとめました。あわせて、人事・総務が関わりやすい「食物」の項目に注目し、福利厚生でどのような取り組みができるのかも解説します。

WELL認証とは

外壁沿いに植えられたユーカリの木

WELL認証の概要

WELL認証(WELL Building Standard)とは、建物やオフィスなどの空間が、そこで過ごす人の健康とウェルビーイングにどれだけ配慮しているかを評価・認証する国際的な制度です。IWBI(International WELL Building Institute)が運営しており、日本国内では一般社団法人グリーンビルディングジャパン(GBJ)が情報提供や普及活動を担っています。

特徴は、医学的・科学的な研究をもとに評価基準が作られている点と、設計時の性能だけでなく運用状況まで審査の対象になる点です。省エネ性能や環境負荷を評価するLEED認証やCASBEEとは異なり、WELL認証が見ているのは「そこで過ごす人への影響」です。書類審査に加えて、実際の建物で空気質や水質、光、音などを測定する現地検証があり、数値で裏づけられた環境かどうかが問われます。

制度は四半期ごとにも改訂が入るため、取得を検討する際は必ず最新版を確認しましょう。

WELL認証が注目されている背景

WELL認証が注目されている背景のひとつが、人的資本経営への関心の高まりです。2023年3月期決算から、有価証券報告書を発行する企業を対象に人的資本に関する情報開示が義務づけられ、従業員への投資を対外的に説明する必要性が高まりました。そのため、国際的な基準で職場環境を評価できるWELL認証は、その説明材料として活用されています。

国内の取得件数も伸びており、GBJの集計によると、2026年8月時点で日本の認証件数は108件、予備認証は13件で、国別では8位でした。世界全体の認証件数は2,739件です。

健康経営優良法人認定との関係

国内の制度でいえば、経済産業省が推進する健康経営優良法人認定制度と、目指す方向性が近い部分があります。どちらも従業員の健康を経営課題として捉える点は共通しています。

違いは評価する単位です。健康経営優良法人が企業の取り組み全体を評価するのに対し、WELL認証はオフィスやフロアといった特定の空間を単位として評価します。どちらかを選ぶというより、併走させて考えるものだと捉えるとわかりやすいでしょう。実際、健康経営を進めるなかで実施した施策が、そのままWELL認証の評価対象になることもあります。

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WELL認証の評価項目|10のコンセプト

会議室でノートパソコンを開いて笑顔で話す社員たち

WELL認証は、2014年に最初のバージョンが発表され、その後アップデートを重ねながら発展してきました。2026年9月現在はWELL v2が運用されており、空気・水・食物・光・運動・温熱快適性・音・材料・こころ・コミュニティという10のコンセプトと、加点のみで構成される「イノベーション」で評価されます。

各コンセプトには、認証を受けるために必ず満たす必要がある「必須項目(Precondition)」と、点数を積み上げるための「加点項目(Optimization)」があります。必須項目を1つでも満たせなければ、加点項目の点数にかかわらず認証は受けられません。

ここからは、コンセプトごとの内容を紹介します。福利厚生と関わりの深い「食物」については、記事後半でさらに詳しく取り上げます。

空気(Air)

オフィス内の空気の質を保つためのコンセプトです。必須項目には、空気の質、禁煙環境、換気の設計、建設段階での汚染管理が含まれます。加点項目では、空気の濾過や給気の強化、開閉可能な窓の設置、空気質のモニタリングと従業員への情報共有などが評価されます。

水(Water)

水質と水分補給に関するコンセプトです。必須項目は水質、飲料水の質、基本的な水質管理の3つ。加点項目には、飲料水の摂取を促す取り組みや湿気の管理、衛生に対する支援などがあります。給水設備を従業員が使いやすい場所に置くといった運用面の工夫も関わってきます。

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食物(Nourishment)

従業員が健康的な食生活を送れる環境かどうかを評価するコンセプトです。必須項目は、果物・野菜の摂取促進と、栄養の透明性の2つ。加点項目には、精製成分、食品広告、人工的な原材料、一人前の適切な分量、栄養教育、心豊かな食事機会の推奨、特別食、責任のある食品調達などが並びます。

ここで対象になるのは、社員食堂だけではありません。企業が日常的に提供・販売している飲食物が広く含まれるため、置き菓子やドリンクサービス、自動販売機なども関わってきます。10のコンセプトのなかでも、建物の性能ではなく日々の運用が問われる度合いが高い領域です。

光(Light)

照明環境に関するコンセプトです。必須項目は光曝露とビジュアル照明デザイン。加点項目では、体内時計に配慮したサーカディアン照明デザインや、グレア(まぶしさ)の制御、昼光を取り入れる設計、利用者が自分で明るさを調整できる仕組みなどが評価されます。

運動(Movement)

座りっぱなしを防ぎ、からだを動かしやすくするためのコンセプトです。必須項目は、活動を促す建物とコミュニティ、人間工学に配慮した作業空間の2つ。加点項目には、階段の利用を促す設計や昇降式デスクなどのアクティブな什器、運動のためのスペース・器具、自転車通勤の設備といったものがあります。

温熱快適性(Thermal Comfort)

室内の温度や湿度に関するコンセプトです。必須項目は温熱性能。加点項目では、温度のゾーニングや個別の温度制御、湿度管理、温熱快適性のモニタリングなどが評価されます。暑がりの人と寒がりの人が同じ空間で働くことを前提に、選択肢を用意できているかが問われます。

音(Sound)

音環境に関するコンセプトです。必須項目は音響マッピング。加点項目には、最大騒音レベルの管理や遮音壁、残響時間、吸音性能のある仕上げ材などがあります。集中したい場所と会話をしたい場所を分けるなど、目的に応じた音環境づくりが求められます。

材料(Materials)

建材や日々使うものに含まれる有害物質を減らすためのコンセプトです。必須項目には材料の制限、室内の有害材料の管理などが含まれます。加点項目では、揮発性化合物の制限や材料の透明性、廃棄物の管理、清掃用品と清掃手順などが評価されます。

こころ(Mind)

メンタルヘルスに関するコンセプトです。必須項目はメンタルヘルスの促進と、自然と環境の2つ。加点項目には、メンタルヘルスサービスや教育、ストレス管理、休息のためのスペースやプログラム、自然へのアクセス促進などがあります。研修や相談窓口といった制度面の取り組みも対象になります。

コミュニティ(Community)

組織としての取り組みを評価するコンセプトです。必須項目は、健康・ウェルビーイングの促進、統合的なデザイン、緊急時に備えた準備、入居者の健康に関する調査の4つ。加点項目には、保険サービスと給付、新生児の両親に対する支援、家族支援、多様性と包摂、アクセシビリティとユニバーサルデザインなどが含まれます。福利厚生制度とも関連の深い領域です。

イノベーション(Innovation)

加点項目のみで構成される枠です。WELL独自の先進的な取り組みのほか、WELL APという専門資格を持つ人材のプロジェクト参加、WELL教育の実施、LEEDなどほかのグリーンビルディング評価システムの取得などが加点の対象になります。

WELL認証のランクと取得までの流れ

デスクに置かれたノートパソコンとコーヒーカップ

WELL認証の4つのランク

WELL認証には、ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナという4つのランクがあります。すべての必須項目を満たしたうえで、加点項目の合計点に応じてランクが決まる仕組みです。

  • プラチナ:80点以上

  • ゴールド:60〜79点

  • シルバー:50〜59点

  • ブロンズ:40〜49点

10のコンセプトで最大100点、イノベーションで最大10点の、合計110点満点です。また、シルバー以上を目指す場合は、各コンセプトで最低限必要な点数が定められているため、得意な分野だけで点数を稼ぐことはできません。

WELL認証取得までのステップ

大まかな流れは、事前調査と登録、書類審査、現地検証、最終審査という4段階です。まずIWBIにプロジェクトを登録し、必須項目と加点項目を満たしていることを示す書類を提出します。書類審査の結果通知までは20〜25営業日が目安ですが、不備を指摘されて修正・再提出になることも珍しくありません。

書類審査を通過すると現地検証に進みます。数日かけて空気質・水質・光・音・温熱環境などの測定と、さまざまな項目のスポットチェックが行われます。測定結果を含めて最終審査が行われ、点数と認証ランクが確定します。全体では1〜2年かかることが多いです。

WELL認証取得のための費用の目安と更新

費用は、登録時にかかる固定費と、対象面積に応じたプログラム費、現地検証にかかる費用で構成されます。規模や用途、為替、検証を担当する事業者によって変わるため、概算を知りたい場合はIWBIの公式の料金表を確認するのが確実です。

また、WELL認証は一度取得すれば終わりではありません。有効期限は3年で、継続するには再認証の手続きが必要です。取得後も環境の維持に関する年次報告が求められるため、一時的な取り組みではなく、続けられる体制を前提に設計することが大切になります。

WELL認証を取得している企業の例

ワークスペースで並んで作業をする社員たち

国内でも取得事例が増えています。ここでは、取り組み内容がわかりやすい2社を紹介します。

竹中工務店 東京本店オフィス

2020年1月、東京本店オフィスでWELL v2のゴールドを取得しました。新しい評価基準であるv2が適用された、国内で初めての事例です。2004年竣工の建物に対し、2018年に実施した改修と運用改善をあわせて評価を受けています。

評価された取り組みには、光庭を中心としたワークプレイスや自然採光・自然換気、利用を促す吹き抜け階段、昇降式デスクの導入などがあります。食に関しては、野菜の摂取を促すデリカウンターの設置や社員食堂メニューの多様化が挙げられており、建物の改修だけでなく、日々の食の提供内容も評価の一部になっていることがわかります。

【参考】竹中工務店東京本店オフィスがWELL認証ゴールドを取得(株式会社竹中工務店)

丹青社 品川本社オフィス

2026年4月、品川本社でWELL v2の最高ランクであるプラチナを取得したと発表しました。同社の発表によると、全面的な改装ではなく、音環境の改善や休息エリア・運動エリアの充実といった部分的な改装で、96点での取得を実現しています。

オフィスを閉鎖せずに段階的に取り組んだ事例であり、既存のオフィスでも工夫次第で高いランクを目指せることを示しています。

【参考】品川本社が「WELL認証(v2)」最高ランクのプラチナを取得(株式会社丹青社)

なお、WELL認証には有効期限があり、更新されているかどうかで状況が変わります。取得企業の最新情報を調べる際は、GBJやIWBIが公開しているプロジェクト情報をあわせて確認しましょう。

福利厚生でWELL認証に取り組むには

オフィスに置かれたボックスから個包装のおやつを選ぶ様子

評価項目には運用や制度に関するものも含まれる

ここまで見てきたとおり、WELL認証の評価項目は建物の設計や工事だけで完結するものではありません。食物のコンセプトの多くは「日々どんな飲食物を提供しているか」という話ですし、こころのメンタルヘルスサービスや教育、コミュニティの家族支援や多様性への配慮、運動の促進なども、運用・制度に関する領域です。

つまり、認証取得を進めるうえで、福利厚生の担当者が果たせる役割は大きいといえます。設備の改修と並行して、制度や日々の運用を見直していく視点が必要になります。

「食物」の項目で見直したいポイント

10のコンセプトのなかでも、食物は福利厚生から手をつけやすい領域です。評価項目の内容をふまえると、次のような観点が挙げられます。

  • 果物や野菜を選べる状態になっているか

  • 提供している飲食物の栄養成分やアレルゲンの情報が、従業員に伝わる形で示されているか

  • 砂糖や精製された原材料の多い商品に偏っていないか

  • 一人前の分量が適切か

  • アレルギーやベジタリアンなど、食の制約がある人にも選択肢があるか

  • 落ち着いて食事や休憩ができる場所が確保されているか

これらは、いずれも大がかりな工事を伴わずに検討できる項目です。今ある福利厚生の中身を確認するところから始められます。

評価項目は食環境を見直すチェックリストとしても使える

WELL認証の評価項目は、専門家が科学的なエビデンスをもとに整理したものです。そのため、認証の申請とは切り離して読んでも、職場の食環境を点検するための実用的なチェックリストになります。

たとえば「栄養の透明性」という観点から自社の置き菓子を見直すと、原材料や栄養成分が確認できない商品ばかりだった、といった気づきが得られることもあります。将来的に認証取得を検討する可能性があるなら、こうした足元の見直しは、そのまま準備にもなります。

食の福利厚生でできる取り組み例

オフィスに商品を置くタイプでは、置き菓子やオフィスコンビニ、置き社食といったサービスがあります。商品の入れ替えで内容を調整しやすく、健康志向のラインナップに寄せることも比較的しやすい形態です。フルーツや野菜を扱うサービスを組み合わせる方法もあります。

飲みものについては、オフィスコーヒーやドリンクサービス、ウォーターサーバーなどが該当します。無糖やカフェインレスの選択肢を用意するなど、多様な体質や好みに対応できるかが検討のポイントです。

社員食堂やお弁当の配達サービスを利用している場合は、メニュー構成や栄養成分の表示方法を提供事業者と相談する余地があります。あわせて、食に関するセミナーや情報発信を行えば、栄養教育の観点からの取り組みにもつながります。

食の福利厚生サービスを選ぶときに確認したいこと

食の福利厚生サービスを選ぶ際は、次のような点を事前に確認しておくと、あとから困りにくくなります。

  • 原材料や添加物の情報を確認できるか

  • 栄養成分やアレルゲンの表示があるか、または情報を取り寄せられるか

  • 健康志向の商品を選んで導入できるか、ラインナップを調整できるか

  • 補充や在庫管理などの運用負担が、自社の体制で無理なく続けられる範囲か

特に情報の開示状況は、WELL認証の申請時に書類として求められる可能性がある部分です。導入前の段階で提供事業者に確認しておきましょう。

WELL認証に取り組むときの注意点

まず押さえておきたいのは、特定のサービスを導入したからといって、加点が確定するわけではないという点です。認証の可否や点数は、提出書類と現地検証をふまえて審査機関が判断します。要件の解釈にも幅があるため、取得を本気で目指すのであれば、WELL APの資格を持つ専門家やコンサルティング会社に相談するのが確実です。

また、必須項目には空気や水、光といった設備・建物側の対応が必要なものも含まれます。福利厚生だけで認証が取得できるわけではないため、施設管理の部門と連携しながら進める必要があります。

そしてもうひとつ、制度として用意しても従業員に使われなければ、健康への効果も評価も期待できません。導入前にニーズを把握し、導入後も利用状況を見ながら調整していくことが大切です。

【関連記事】福利厚生サービスの利用率を上げるには?伸び悩みの原因・実態と効果的な改善アドバイス

WELL認証に関するよくある質問

棚に並んだスナックミーのおやつ

Q. WELL認証は新築の建物でないと取得できませんか?

A. 既存の建物でも取得できます。評価項目には運用や制度に関するものが含まれるため、改修だけでなく、日々の運用改善で対応できる部分もあります。実際に、既存オフィスを部分的に改装して最高ランクのプラチナを取得した事例もあります。

Q. テナントとして入居しているオフィスでも取得できますか?

A. 取得できます。WELL v2には、建物全体や専有部を対象とする類型のほか、テナントビルの共用部を主な対象とする「WELL Core」という類型があります。自社が借りているフロアを単位として登録する形も可能です。ただし対象範囲によって要件が変わるため、事前の確認が必要です。

Q. 福利厚生を充実させるだけでWELL認証は取得できますか?

A. 福利厚生だけでは取得できません。必須項目には空気質や水質、照明、音環境など、設備や建物に関わるものが含まれています。福利厚生は、食物やこころ、コミュニティといったコンセプトで貢献できる要素のひとつという位置づけです。

Q. 認証の有効期限はどれくらいですか?

A. 3年間です。継続するには再認証の手続きが必要で、現地検証を含む再評価を受けます。また、取得後も環境の維持に関する年次報告が求められます。

Q. 健康経営優良法人とWELL認証は、どちらを優先すべきですか?

A. 目的によって異なります。国内での認知度やコストを重視するなら健康経営優良法人、国際的な基準で職場環境そのものを評価してほしい場合はWELL認証が向いています。評価の単位が企業全体と空間で異なるため、両方に取り組む企業もあります。自社が何を対外的に示したいのかを整理してから検討するとよいでしょう。

WELL認証をきっかけに職場環境を整える

WELL認証は、働く人の健康とウェルビーイングという視点から空間を評価する国際的な制度です。10のコンセプトで構成され、必須項目をすべて満たしたうえで、加点項目の点数に応じてブロンズからプラチナまでのランクが決まります。取得には時間も費用もかかりますが、評価項目には日々の運用や社内制度に関するものが数多く含まれており、人事・総務が担える部分は思いのほか多く存在します。

なかでも「食物」は、福利厚生の見直しから着手しやすい領域です。果物や野菜を選べる環境、栄養成分やアレルゲンの情報開示といった観点は、認証を申請するかどうかにかかわらず、職場の食環境を整えるうえで役立つ視点だといえます。

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まずは今ある福利厚生の中身を、WELL認証の評価項目に照らして見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。認証取得を目指す場合も、そうでない場合も、働く人の健康につながる一歩になるはずです。

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執筆者 snaq.me office編集部

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