マタニティハラスメント対策とは?概要と注意点、取り組みのメリットをわかりやすく解説

2025/4/22

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近年、職場におけるハラスメント問題への関心が高まるなか、とりわけ深刻な影響を及ぼすのが妊娠や出産を理由に不当な扱いを受ける「マタニティハラスメント」です。マタニティハラスメントは働く女性や育児に携わる男性のキャリア継続に支障をきたすだけでなく、職場全体の信頼や生産性の低下にも直結します。法的にも男女雇用機会均等法や育児・介護休業法により厳しく禁止されており、企業には予防措置と対応体制の整備が義務付けられています。本記事では、企業に求められるマタニティハラスメント対策の具体例をはじめ、ハラスメントに該当しうる言葉などについて詳しく解説します。

マタニティハラスメント対策とは

マタニティハラスメント(略称:マタハラ)とは、妊娠や出産、育児休業の取得を理由に職場で受ける嫌がらせや不利益な扱いのことです。マタニティハラスメントは大きく分けて、「不利益取扱い」と「嫌がらせ行為」の2種類があります。不利益取扱いとは、妊娠を理由とした解雇や降格、契約打ち切りなど、労働条件上の不当な扱いを指します。一方嫌がらせ行為とは、妊娠や育児休業の取得に対する否定的な言動や心理的圧力など、職場環境を害する行動を意味します。

これらはいずれも男女雇用機会均等法や育児・介護休業法などの法律で明確に禁止されており、違反した場合には企業に対して法的措置が取られることも少なくありません。最近では女性だけでなく、育児休業や子の看護休暇を希望する男性へのハラスメント、いわゆるパタニティハラスメント(略称:パタハラ)も社会問題化しており、企業には男女問わず安心して育児と仕事を両立できる環境づくりが求められています。

マタニティハラスメント対策のメリット・効果

窓辺で床に座りくつろぐ女性

従業員の安心感とモチベーション向上

マタニティハラスメント対策に取り組むと、従業員は妊娠や出産を迎えても職場で安心して働き続けられるという心理的安全性が高まります。特に妊娠中や育児休業後の復職を考える従業員にとって、企業がサポート体制を明確に示しているかどうかは職場への信頼感に直結するでしょう。安心して子育てができる環境が整備されれば、従業員一人ひとりの会社に対するエンゲージメントや忠誠心が強まり、仕事に対する意欲も自然と向上していきます。

また職場での心理的な負担が軽減されることで、業務効率や生産性の改善にもつながる可能性があります。実際にマタニティハラスメント対策や両立支援制度が充実している企業ほど従業員満足度やモチベーションが高く、長期的には組織のパフォーマンス向上にも寄与しているケースが多く見られます。職場環境の改善は企業と従業員双方にとって大きなメリットになるのです。

離職防止・人材定着の促進

マタニティハラスメント対策が整備されている企業は、従業員が出産を経験した後も安心して職場復帰を果たせる環境が整っています。育児と仕事を無理なく両立できるような制度やサポートが充実している企業は、従業員は出産を理由にキャリアを諦めたり、離職を選んだりすることが大幅に減るでしょう。長年培った知識やスキル、経験を持つ人材が職場に定着することで、組織内でのノウハウ継承や業務効率化にも寄与します。

また、従業員の定着率が高ければ、新たに人材を採用・教育するためにかかる多額の費用や時間も削減でき、結果として企業のコストダウンに貢献します。さらに、離職率が低下することで職場の雰囲気も安定し、チームワークの強化や業務品質の向上につながります。妊娠や出産を迎えた従業員が自信を持ってキャリアを継続できる職場環境は、優秀な人材が長期間にわたって活躍し続けられる企業の土壌となるでしょう。

企業価値の向上・労務リスク低減

マタニティハラスメント対策に真摯に取り組むことは、企業の社会的評価を大きく高める要因となります。例えば子育て支援に積極的な姿勢を示すことで、厚生労働省が認定する「くるみん認定」などの取得につながり、対外的な信頼感も向上します。外部認定取得は求職者にとって魅力的な職場の指標となり、採用競争力の強化にも寄与するでしょう。また、マタニティハラスメントに対する明確な方針と実効的な仕組みを持つことにより、マタニティハラスメントに関する訴訟リスクや行政指導を回避できる点も企業にとって重要なメリットです。

さらに、マタニティハラスメントの発生を未然に防ぐことで、従業員がメンタル面での不調に陥るリスクも低減できます。精神的ストレスや労災認定などの深刻なトラブルが防げれば、組織全体の健全性も保たれます。安心して働ける職場では、従業員が本来の業務に集中しやすくなり、結果として生産性やパフォーマンスの向上につながります。リスクマネジメントと企業価値の向上、その両立を実現する上でマタハラ対策は欠かせない取り組みといえるでしょう。

マタニティハラスメント対策のデメリット・注意点

コーヒーカップが置かれたテーブルでノートパソコンに向かい、チョコレートを摘まむ手元

管理職の意識・対応力不足

マタニティハラスメントの予防・解決において、管理職の理解と対応力は極めて重要な要素です。しかし現実には、法制度やマタニティハラスメントに関する知識が十分に浸透しておらず、適切な対応が取られないケースが少なくありません。特に、妊娠・出産や育児休業に対して旧来的な価値観を持つ管理職の場合、無意識の偏見や誤った常識に基づく言動がマタニティハラスメントを引き起こす原因となります。

例えば「妊娠中は重要な業務を任せられない」「育休を取るならキャリアを犠牲にすべき」といった発言や判断は、当事者の意欲や能力を軽視するものです。これが原因で、信頼関係の崩壊や職場の士気低下に発展することも考えられます。加えて、対応を誤った際に企業が法的責任を問われるリスクも否定できません。

こうした状況を放置すれば、マタハラを未然に防ぐことが困難になります。意識改革が進まないままでは表面化していない問題が水面下で蓄積され、やがて大きな労務トラブルへと発展する可能性があるでしょう。組織としては、管理職一人ひとりに対し継続的な研修や情報共有を行い、対応の質を一定以上に保つ努力が求められます。適切な知識と態度を備えた管理職がいることは、職場全体の信頼性を高める上でも不可欠です。

従業員の無自覚な言動によるハラスメント

マタニティハラスメントの中には、加害者自身が自覚のないまま発言や態度で相手を傷つけてしまうケースが少なくありません。例えば「また休み?」「育児中は楽でいいね」など、軽い冗談のつもりで口にした言葉が、妊娠中や育児中の従業員にとっては強いプレッシャーや否定として受け止められることがあります。悪意がなかったとしても、受け手の感じ方次第でハラスメントとなることがある点は、職場全体で理解しておく必要があります。

このような無自覚な言動は、特に妊娠や子育ての経験がない従業員に多く見られる傾向があります。背景には育児に関する正しい知識の不足や、妊娠に伴う身体的・精神的負担への理解が乏しいことがあるでしょう。そのため発言者本人は「励まし」のつもりでも、相手にとっては疎外感や評価の低下といったネガティブな印象を与える結果になりかねません。

こうした認識のズレが放置されると職場全体に誤った空気が蔓延し、当事者が孤立する原因となります。やがては信頼関係が損なわれ、チームワークや業務の効率にも悪影響を及ぼすでしょう。マタニティハラスメントを防ぐためには、従業員一人ひとりが自分の言動が他者にどう影響するかを意識し、配慮をもったコミュニケーションを心がける必要があります。そのためには、継続的な啓発活動や全社的な教育体制の整備が欠かせません。

制度運用面での課題

マタニティハラスメントを防止するために、育児休業制度や時短勤務制度などの仕組みを整えている企業は少なくありません。しかし、制度として存在するだけでは、実際の運用において柔軟かつ公平に機能していなければ、従業員にとって利用しにくい「形だけの制度」にとどまってしまいます。特に中小企業では、人手不足や業務分担の偏りといった構造的な制約があるため、制度の実効性が問われる場面が多く見られます。

例えば、育児休業を取得しようとする従業員に対して「今の時期に抜けられると困る」といった暗黙の圧力がかかれば、制度が存在していても利用をためらう要因となるでしょう。また、制度を利用した従業員が復職後に重要な業務から外されたり、昇進の機会を逃したりするようなことがあれば、それもまた実質的なマタニティハラスメントにつながります。

代替要員の確保が困難な中小企業においては、制度運用に対する現場の理解と協力が不可欠です。制度の趣旨や活用方法を明確に伝え、管理職と現場担当者が連携して柔軟に対応できる体制を整えることが求められます。加えて、制度利用者の業務をカバーする仕組みや教育体制が整っていなければ、他の従業員の負担が過剰になり、職場内で不満や摩擦が生じるおそれもあります。

こうした課題を放置すれば、制度そのものの信頼性が低下し、従業員のエンゲージメントや定着率にも悪影響を及ぼしかねません。制度を「使えるもの」として根付かせるためには、導入時の整備にとどまらず、運用面での不断の見直しと改善が不可欠といえるでしょう。

相談窓口の整備不足・匿名性の低さ

マタニティハラスメントを未然に防ぐためには、従業員が安心して相談できる体制の整備が不可欠です。しかし、実際の企業では相談窓口の存在が形骸化していたり、十分に周知されていなかったりするケースが見受けられます。特に相談内容が直属の上司や人事部に直接伝わってしまうような仕組みでは、従業員が「報復を受けるのではないか」と不安を抱き、声を上げにくくなるでしょう。

匿名性が担保されていない相談体制では、被害者が問題を内に抱えたまま我慢してしまう傾向が強くなります。結果としてマタニティハラスメントの実態が表に出ず、組織としての対応が遅れる原因にもなりかねません。相談件数が極端に少ない職場が必ずしも問題のない環境とは限らず、むしろ声を上げられない空気が蔓延している可能性も考慮すべきです。

また、相談を受ける側の対応力にも課題があります。窓口担当者がマタニティハラスメントに関する知識を持っていない場合は適切な対応ができず、相談者がさらに傷つくリスクも否定できません。そうなれば相談制度そのものへの信頼が失われ、以降の利用を避ける従業員が増えてしまう恐れがあります。

このようなリスクを回避するには、匿名で相談できる外部窓口の導入や複数の相談経路を設けるなどの工夫が必要です。さらに、担当者への専門的な研修の実施や相談者のプライバシー保護を徹底する方針を明文化することで、従業員が安心して声を届けられる体制を構築できます。信頼される相談窓口の存在は、職場全体の健全性を保つための基盤となるでしょう。

マタニティハラスメント対策の取り組み事例

ソファでスナックミーのお菓子の箱を囲む、2人の女性

経営者のコミットメント・企業文化の形成

マタニティハラスメント対策を実効性あるものにするためには、まず経営者の明確なコミットメントが欠かせません。経営者が「妊娠・出産に関するハラスメントを決して許さない」という姿勢を示し、その方針を社内に周知することが、組織全体の意識を変える出発点となります。単なる制度の整備にとどまらず、企業としての価値観を共有し、全社員が同じ方向を向いて行動できるようにすることが求められます。

例えば、社長や役員が社内報や全体会議の場でマタニティハラスメント防止の重要性を語るだけでも、従業員の受け止め方は大きく変わるでしょう。また、経営者が制度運用の現場に目を配り、定期的な進捗確認や現場の声を吸い上げる仕組みを持つことも、取り組みの継続性を高める鍵となります。

こうした方針が社内文化として根付けば、職場の中で妊娠や育児に対する理解や協力が自然と広がりやすくなります。マタニティハラスメント防止は単に法令を守るための義務ではなく、誰もが安心して働ける環境をつくるという企業の姿勢そのものを反映するものといえるでしょう。トップダウンによる明確なメッセージと、それを支えるボトムアップの風土改革の両輪がそろって初めて、持続可能な取り組みへとつながります。

教育研修の徹底・従業員の意識改革

マタニティハラスメントを防止するためには、制度や方針だけでなく、職場で働く一人ひとりの意識を変えていくことが不可欠です。そのための基盤となるのが管理職および全従業員を対象とした教育研修の徹底です。特に管理職は妊娠や育児に関する相談を最初に受ける立場であるため、その対応次第で職場の雰囲気や当事者の安心感が大きく左右されることになります。

具体的には、法的知識だけでなく、どのような言動がマタニティハラスメントに該当するか、実際の事例を交えた研修を実施することが効果的です。ケーススタディやロールプレイを取り入れることで、現場に即した対応力を養うことができるでしょう。形式的な講義に終始せず、管理職自身が主体的に考える場を設けることが重要です。

また、従業員全体に対しても定期的にマタニティハラスメントに関する啓発を行うことが求められます。例えば、社内ポスターやイントラネットでの情報発信、eラーニングなど、多様な手段を組み合わせて継続的に理解を深めていく工夫が必要です。日常の言動がどのような影響を与えるかを自覚し、互いに配慮し合える風土を育てることが最終的な目標といえるでしょう。

このように、教育と啓発を継続的に行うことは制度を支える「土壌」を整えることにほかなりません。全社員の意識が変わることでマタニティハラスメントの芽を早期に摘み取り、誰もが安心して働ける職場づくりにつながっていきます。

相談窓口・内部通報制度の充実

マタニティハラスメントの早期発見と適切な対処のためには、信頼される相談窓口や内部通報制度の整備が不可欠です。相談しやすい環境がなければ被害者は問題を抱えたまま沈黙してしまい、結果として状況が深刻化する恐れがあります。そのため、従業員がためらわずに声を上げられる体制づくりが求められます。

まず重要なのは複数の相談ルートを設けることです。例えば直属の上司ではなく人事部や外部カウンセラーなどの立場の異なる複数の窓口があることで、相談者は自分にとって最も安心できる経路を選ぶことができます。さらに、匿名での相談を受け付ける仕組みも有効です。相談内容が特定の人物に知られることへの不安を和らげることで、声を上げやすくなるでしょう。加えて労働局や専門NPOなどの社外の第三者機関と協力体制を築くことで、社内では相談しにくい内容にも対応可能となります。

こうした制度を整えるだけでなく、全社員に対してその存在と利用方法を周知することも忘れてはなりません。制度はあっても認知されていなければ機能しませんし、利用に対する心理的ハードルが下がらなければ意味がありません。相談を受ける担当者の研修やガイドラインの整備を行うことも含めて、実効性ある制度運用が求められます。信頼される相談体制は、健全な職場環境の土台となるのです。

制度の明文化・公平な運用の徹底

マタニティハラスメント対策を企業内で定着させるには、関連制度を明文化し、誰にとっても分かりやすい形で整備することが不可欠です。曖昧な運用や属人的な対応では、制度そのものの信頼性が損なわれ、当事者の不安感を助長するおそれがあります。そのため、就業規則やハラスメント防止規定に、妊娠・出産・育児休業を理由とする不利益取扱いの禁止や、具体的な禁止行為の例を明記することが求められます。

例えば、「育児休業取得を理由に昇進機会を制限しない」「妊娠中の業務軽減申請に基づく配置転換は本人の同意を前提とする」など、従業員が実際に直面する可能性のある状況を想定した記載が望ましいといえるでしょう。こうした規定は単に整備するだけでなく、入社時の説明や定期的な社内研修を通じて、全社員に確実に周知させることが必要です。

さらに、制度の運用においては公平性が不可欠です。部署や上司によって対応に差が出るようでは、信頼は築けません。全社的に統一された運用基準を設け、それに沿って処理される体制を構築することが重要です。人事部門が定期的に運用状況をモニタリングし、必要に応じて是正措置を講じることで、制度の形骸化を防ぐことができます。また、違反が発覚した場合には、社内規定に基づいて厳正に対処する姿勢を示すことも信頼醸成につながります。このように制度と運用の両軸で整備を行うことがマタニティハラスメントのない職場づくりにとって重要です。

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執筆者「中川栞」の顔写真

執筆者 中川栞|株式会社スナックミー ライター・エディター

Web制作会社の管理職としてライターの指導・教育に従事したのち、株式会社スナックミーでコンテンツ制作を手掛ける、おやつライター兼エディター。安心・安全の「おやつ時間」の楽しみ方や、暮らしや職場におやつがある日々の豊かさ、福利厚生置き菓子の魅力を軸に、自社オウンドメディア『snaq.me magazine』の記事や商品パッケージのコピーライティングなどを担当。好きなおやつは『スナックミーのやさしいキャラメル』と『キングソロモンデーツ』。

※本サイトは、福利厚生の導入や運用に関する制度や実務面でのアドバイスを提供するものではありません。当社は本サイトの記載内容(事例を含む)の正確性や妥当性に努めておりますが、各企業の状況に応じて、専門家へのご相談やご自身の判断のもとでご利用いただきますようお願い申し上げます。

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