給与デジタル払いとは?概要と注意点、取り組みのメリットをわかりやすく解説

2025/7/8

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キャッシュレス化が進む現代社会において、企業の給与支払い方法も新たな局面を迎えています。2023年4月より制度化された「給与デジタル払い」は、銀行口座を介さずスマートフォンアプリ等で給与を受け取れる仕組みであり、特に若年層や外国人労働者への対応手段として注目されています。導入には法的要件やシステム面での整備が必要となる一方、業務効率化や従業員満足度の向上といった多くの利点も見込まれます。本記事では、制度の概要からメリット・デメリット、導入時に求められる実務上の対応までを網羅的に解説します。人事総務部門における検討材料として、ぜひご活用ください。

給与デジタル払いとは

給与デジタル払いとは、銀行口座への振り込みではなく、スマートフォン決済アプリや電子マネーを通じて賃金を振り込む、新しい給与支払いの方法です。従来は「賃金は現金で直接支払う」とする労働基準法上の原則がありましたが、2023年4月の制度改正により、一定の条件を満たすことでデジタルマネーによる支払いも可能になりました。具体的には、政府に登録された資金移動業者(例:PayPayなど)のアカウントに給与を送金する仕組みで、仮想通貨や換金性のないポイントでの支払いは認められていません。また、資金移動業者の口座に保持できる残高の上限は100万円と定められており、業者が破綻した場合にも労働者の資産を保護する仕組みが整備されています。

給与デジタル払いの導入にあたっては、労使協定の締結と就業規則(給与規定)の改定、給与デジタル払いを希望する従業員の同意書提出が必要です。従業員は、従来の銀行振込による支払いと給与デジタル払いでの支払い、銀行振込とデジタル払いの併用から選ぶことができます。

給与デジタル払いのメリット・効果

ノートパソコン横に並べられたビールとおつまみの盛り合わせ

従業員の利便性と満足度の向上

給与デジタル払いは、従業員に給与の受取手段の選択肢を提供できるため、自身に合った受取方法にすることで、利便性と満足度の向上が期待できます。スマートフォンアプリを通じて給与を確認できるうえ、口座からチャージせずにそのまま支払いに利用できるため、若年層やスマホ決済に慣れた世代には好意的に受け入れられる傾向があります。また、給与の一部を日払いや週払いで支払いをするなど、ライフスタイルに合わせた設計も可能で、働き方の多様化に応じた対応が実現できます。
現在では、制度上、銀行口座との紐付けが必要なため、利用には一定の制約がありますが、今後の法改正次第では、銀行口座を保有していない外国人労働者や非正規社員にとって、金融アクセスのハードルを下げる効果も期待され、多様な人材の採用・定着にも寄与する可能性があります。

事務負担の軽減とコスト削減の実現

企業にとって、給与デジタル払いはコスト構造の見直しと業務効率の改善につながります。従来の銀行振込に比べ、資金移動業者の手数料は安価である場合が多く、振込にかかるコストを抑えることが可能です。また、紙媒体での明細配布や手渡し処理が不要になることで、事務作業の負担も軽減されます。
さらに、給与計算システムと連携した自動振込により、ヒューマンエラーを減らし、人的コストを削減できる点も企業側のメリットといえるでしょう。ただし、企業内に銀行口座への振り込みと給与デジタル払いを希望する従業員が混在する場合や、支払い方法の併用を選択する従業員がいる場合には、業務量や管理コストが増加する懸念もあります。業務フローや管理方法の整備を行い、負担が軽減されるような工夫が求められます。

多様な雇用形態への対応力向上

給与デジタル払いの導入は、柔軟な働き方への対応を後押しします。たとえば、副業人材や短期アルバイト、フリーランスなど、多様な雇用形態への給与支払いにも適しています。スマートフォンさえあれば給与の受け取りが可能となるため、従業員側の利便性が高まり、採用の幅を広げられる1つの要因になります。また、即時払い機能を組み合わせれば、必要なタイミングで報酬を得られる環境が整い、金銭的余裕を求める層のニーズにも応えられます。従来の銀行営業日に縛られない給与支払が実現することで、就業者のライフスタイルに応じた柔軟な対応が進められ、企業の人材獲得力の強化につながるでしょう。

デジタル化推進と企業ブランドの向上

給与デジタル払いは、企業のデジタル化戦略の一環として注目されています。ペーパーレス化やキャッシュレス化の推進により、環境負荷の軽減や業務効率の向上が見込まれます。デジタル化の取り組みは「柔軟で時代に即した企業」というイメージを社内外に訴求できる点も大きなメリットになるでしょう。特に、若手人材やデジタルネイティブ世代からは、企業の革新性や働きやすさに対する評価が高まる可能性があります。さらに、楽天ペイやPayPayなど利用者の多い決済サービスを活用すれば、従業員の日常生活における利便性も高まり、企業へのロイヤルティ向上が期待されるため、制度導入は経営戦略の一部としても活用できます。

給与デジタル払いのデメリット・注意点

お菓子を手にノートパソコンとモニターの画面を見て作業する女性

セキュリティ面におけるリスクへの対応が求められる

給与デジタル払いでは、インターネットを介して資金が移動するため、サイバー攻撃や不正アクセスといったリスクがつきまといます。万が一アカウントが乗っ取られれば、給与が第三者の手に渡るおそれも否定できません。さらに、スマートフォンアプリを用いるため、OSやアプリの脆弱性を突いた攻撃にも備える必要があります。このような背景から、企業は資金移動業者のセキュリティ対策や情報保護体制を慎重に精査し、信頼性の高いサービスを選定することが欠かせません。また、セキュリティ強化のために二段階認証の導入や通信の暗号化など、システム上の対策を徹底することが推奨されます。従業員に対してもパスワード管理やフィッシング詐欺への注意を促す教育を行うなど、多角的な対応が求められるでしょう。

労使協定締結や社内規則改定など導入前の負担が大きい

給与デジタル払いの導入には、法的な条件を満たすことが前提となります。まず、労働基準法に基づき、企業と従業員間で労使協定の締結を行う必要があります。労働組合または従業員の過半数代表との協議・合意を経たうえで、制度導入の根拠を文書で明示します。さらに、給与に関する規則を定めた就業規則の改定も必須の対応事項です。
社内の規則を整えたうえで、対象となる従業員に対して十分な説明と、誤解や不安を与えない丁寧な対応を行うことも重要です。特に、非換金性ポイントや仮想通貨による支払いと混同されやすいため、制度内容を正しく伝える工夫が求められます。導入前の準備として、説明資料の整備やFAQの準備、個別説明会の開催など、一定の人的・時間的リソースが必要になる点を考慮すべきでしょう。

利用可能な決済サービスが限られる

現時点で給与デジタル払いに対応する資金移動業者は限られており、全ての従業員が希望する決済サービスを利用できるとは限りません。2025年6月時点では、厚生労働省が認可した資金移動事業者は4社のみであり、メジャーなサービスでも、制度に準拠した運用が認められていなければ使用対象外となります。認可を受けた事業者の中から支払い手段を選定し、従業員の希望とすり合わせる必要があります。また、複数のサービスを利用する場合には、振込形式や管理方法の違いから業務が複雑化しやすく、給与システムのカスタマイズや二重運用による負担増が懸念されます。導入前に社内のIT環境や既存業務プロセスとの整合性に課題が生じないかを慎重に確認することが必要です。

残高上限や通信障害による不便が生じる可能性がある

給与デジタル払いでは、資金移動業者のアカウントに保持できる残高の上限が100万円と定められています。100万円以上の給与や賞与を受け取る従業員にとっては、この制約が利便性を損なう要因となる可能性があります。また、スマホアプリが障害を起こした場合や、インターネット環境が不安定な地域では、給与の受取や利用が一時的に制限されるおそれも否定できません。このような制限は、緊急時の資金確保や家計管理に影響を及ぼす可能性があるため、従業員にとって不安要素となり得ます。企業側もこうした事態を想定した補完措置や、銀行口座との併用による柔軟な対応策を講じる必要があります。制度設計においては、利便性と安全性のバランスを見極めることが重要です。

給与デジタル払いの取り組み事例

ソファーで向かい合わせに座り談笑する人たち

労使合意の形成と制度理解の促進

給与デジタル払いを成功させる第一歩は、社内での十分な合意形成と制度理解の浸透にあります。労働基準法では、労使協定の締結と従業員個人の同意が必要とされており、この点を軽視すると制度導入は困難になります。従って、労働組合または従業員代表との協議を早期に開始し、制度の目的・仕組み・安全性について丁寧に説明することが求められます。説明資料の作成や説明会の開催を通じて、従業員の誤解や不安を払拭する取り組みも重要です。特に「ポイント払いではないか」といった誤認への対応は慎重に行う必要があります。このような地道な情報共有が、制度への信頼形成と円滑な運用につながっていきます。

業者選定とセキュリティ確保の徹底

信頼できる資金移動業者を選定することは、給与デジタル払いの安定運用に直結します。厚生労働省の要件を満たした業者であることはもちろん、セキュリティ体制や利用者サポート、サービスの安定性などを総合的に評価することが欠かせません。さらに、暗号化通信や不正検知機能、二段階認証の有無など、技術的な観点からの比較検討も重要な視点です。併せて、業者が破綻した際に労働者の資産が保護されるスキームが整備されているかも確認しましょう。企業は取引先としての信頼性だけでなく、従業員が安心して利用できる環境を提供する責任を負っています。業者との連携体制を明確にし、トラブル時の対応手順も事前に整えておくことが理想です。

システム連携と運用体制の最適化

給与デジタル払いを円滑に運用するには、既存の給与計算システムや人事管理システムとの連携が不可欠です。従業員ごとに異なる支払方法や金額の指定に対応するには、業務プロセスの見直しやツールの改修が必要となります。また、誤送金や遅延が発生しないよう、振込データの自動生成や検証機能の強化も求められます。特に複数の資金移動業者を利用する場合は、送金先ごとの管理が煩雑になりがちであるため、社内のオペレーションルールを事前に整備することが望ましいでしょう。さらに、運用を担う担当者への教育・研修を通じて、新たな制度の理解とミス防止を徹底し、業務全体を最適化することが制度定着のカギを握ります。

定期的な振り返りと改善ができる体制の構築

制度導入はゴールではなく、継続的な運用と改善が不可欠です。導入後には定期的に利用状況を確認し、従業員からのフィードバックを集める仕組みを整備しましょう。利用率や問い合わせ内容、トラブルの発生状況などを定量的に把握することで、課題の早期発見と対応が可能になります。また、状況に応じて支払方法の選択肢を見直したり、新たな決済サービスを追加したりと、柔軟な対応力も求められます。このような改善サイクルを回すことで、従業員の満足度向上や業務の効率化を継続的に図ることができます。制度を「導入して終わり」にしない体制づくりが、企業全体の成長にもつながるでしょう。

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執筆者 snaq.me office編集部

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