社員旅行(および研修旅行)の利点や悪影響、費用の経費計上方法、従業員満足度を向上させるポイントなどを詳しく解説しながら、企業文化醸成や従業員のモチベーション向上が期待できる、社員旅行に代わる福利厚生のアイデアもご紹介します。
社員旅行とは、従業員の慰労やコミュニケーションの活性化、組織の結束力アップを目的とした社内行事のひとつです。かつては福利厚生の花形として、企業の業界や規模を問わず積極的に実施されてきましたが、近年は働き方や価値観の変容により「社員旅行に行きたくない」という声も散見され、その形態や意義が問い直されています。
社員旅行は、会社などの組織単位で実施される団体旅行を意味し、かつて日本企業の福利厚生の定番として広く親しまれていました。バブル経済崩壊後その実施率は徐々に低下傾向にありますが、最近では働き方改革や従業員エンゲージメントの重要性が見直され、社員旅行を再評価する動きも見られます。特に若手社員の採用・定着に苦心する中小企業や、チームビルディングを重視するIT企業などでは、社員旅行を積極的に取り入れる傾向があります。
社員旅行の実施状況は業種によっても大きく異なります。製造業や建設業などの伝統的な産業においては、現代においても実施している企業が散見される一方、金融業や情報通信業では低い傾向にあります。これは業種の特性や企業文化の違いが反映されているものと考えられます。
社員旅行を実施している企業においては、最近では1泊2日〜2泊3日程度の小旅行、あるいは日帰り旅行が大半を占めています。また業務に影響を及ぼすことを防ぐため、全社員一斉ではなく部署単位や少人数グループでの実施も増えています。
福利厚生制度の中での社員旅行の位置づけも、時代とともに変化しています。かつては言わば強制参加型のイベントとして広く認知されていましたが、現在では「選択型福利厚生」の一環として提供されることが増えています。
カフェテリアプランとも呼ばれる選択型福利厚生は、従業員が付与されたポイントを活用し、企業側で制定したさまざまな種類のメニューから希望するものを選べる制度です。このメニューの一環として旅行補助金やリゾート施設利用券などの形で提供されることが増え、従業員の多様なライフスタイルや価値観に対応することが可能になっています。
食事・スキルアップ・リラクゼーションなどさまざまなサービス優待(主に利用料金の割引)がまとまったパッケージプランにおいても、レジャーや宿泊目的のメニューを利用できることがあります。導入が用意で企業側の手間も少なく、余暇の充実を通じて従業員満足度向上に寄与できます。

「時代遅れ」と思う方もいるかもしれませんが、社員旅行が企業にとって多くのメリットをもたらす福利厚生であるという側面は、今も昔も変わりません。自社に適した形で運用・実施すると、以下のような効果を得られる可能性があります。
社員旅行は、日常の業務環境を離れて従業員同士が交流する貴重な機会のひとつ。普段は接点の少ない部署間や階層間のコミュニケーションが活発になり、組織全体の一体感が醸成されます。旅行中のさまざまな体験を通じて社員同士の理解が深まり、信頼関係が構築されます。これにより、職場に戻ってからも円滑なコミュニケーションが期待できます。
・部署を越えた新たな人間関係の構築
・上司と部下の距離感の縮小
・共通の思い出づくりによる話題の増加
・非公式な場でのアイデア交換や情報共有
楽しい思い出や新鮮な体験は、日々の業務へのやる気を引き出し、結果として生産性の向上につながります。また、旅行を通じて会社や部署への愛着が芽生え、仕事への取り組み姿勢が前向きになることも期待でき、これは長期的な視点で見ると企業の業績向上にも寄与する可能性があります。
・リフレッシュによる業務効率の向上
・新たな目標設定や意欲の向上
・チームワークの強化による協働作業の円滑化
・会社への帰属意識の向上による離職率の低下
日常の業務から離れて非日常的な環境で過ごすことは、従業員の心身のリフレッシュに大きな効果があります。ストレス解消や気分転換により、メンタルヘルスの向上が期待できます。また旅行先での活動を通じて適度な運動を行うことで、身体的な健康維持にも貢献します。心身ともに健康な状態を保つことは、長期的な視点で見ると企業の生産性向上や医療費削減にもつながります。
・ストレス解消による心の健康維持
・新鮮な体験による創造性の向上
・自然環境での活動によるデトックス効果
組織やチーム単位での旅行は、社員の会社に対する帰属意識を強化する効果があり、会社が従業員のために投資をしているという実感が勤め先への愛着や忠誠心を高めます。また旅行を通じて理念や価値観を共有する機会を設けることで、企業文化の浸透や一体感の醸成にもつながり、これは長期的な企業の発展に寄与する重要な要素となります。
・会社への愛着心の向上
・企業理念の理解と共感の深化
・従業員間の絆の強化
・長期勤続意欲の向上
充実した社員旅行制度は、企業の魅力を高め、優秀な人材の採用に有利に働きます。特に若手人材の獲得において、福利厚生の充実は重要な要素となり、既存の従業員にとっても社員旅行は会社の魅力のひとつとして定着率の向上に寄与します。
・求職者に対する企業イメージの向上
・従業員の満足度向上による口コミ効果
・長期的な人材育成の基盤づくり
・社内の世代間交流促進による組織の安定化
企業の社会的評価やブランド力の向上施策としても社員旅行を有効活用できます。従業員を大切にする企業として認知されることで顧客・取引先からの社会的信頼が高まるほか、社員旅行の様子をSNSなどで発信すれば、企業の魅力を外部に伝えることが可能に。間接的に企業の認知度向上や新規顧客の獲得にも寄与する可能性があります。
・従業員満足度の高い企業としての評価獲得
・社会貢献活動と連携した旅行企画による企業イメージの向上
・従業員のSNS発信による口コミ効果の拡大
・メディア掲載機会の増加による知名度向上

社員旅行の実施には、避けて通れない費用負担の問題があります。企業規模や従業員数によっては相当な金額になることも珍しくありません。特に中小企業にとっては、その負担が経営を圧迫する可能性も考えられます。
また費用負担の方法についても慎重に検討する必要があります。全額会社負担・一部従業員負担・全額従業員負担などさまざまな選択肢がありますが、どの方法を選んでも良し悪しがあります。全額会社負担の場合従業員の満足度は高くなりますが、会社の財政状況によっては難しい場合もあります。一方従業員負担を増やせば、参加率の低下につながる可能性があります。
従業員の中には、社員旅行の費用負担について敏感な方もいるため、自己負担額が高いと感じる従業員は参加を躊躇する可能性があります。また会社負担が多すぎると、その分が給与や他の福利厚生に回せるのではないかと考える従業員もいるかもしれません。
業務リソースへの影響についても、社員旅行を行う際に熟考する必要があります。特に顧客対応や納期の厳しい業務を抱える部署では、旅行の日程調整が非常に困難になる場合があるほか、社員全員が同時に休暇を取得することで、業務が完全にストップしてしまう可能性もあります。これは特に、中小企業や専門性の高い業務を行う企業にとっては大きな問題となり得ます。
多くの企業では、年間を通じて業務の繁忙期が存在します。この時期を避けて社員旅行を計画する必要がありますが、業種によっては適切な時期を見つけること自体が困難な場合もあります。さらに、個々の従業員の業務スケジュールや個人的な予定との調整も必要となり、全員が参加可能な日程を設定することは容易ではありません。
社員旅行は主に従業員の親睦を深める目的がありますが、家庭の事情や個人的な理由で参加できない従業員も必ず存在し、全員参加を強制することは容易ではありません。また、社員旅行に行きたくない、あるいは参加する意義を感じない従業員もいる可能性があります。こうした従業員に対して参加を強制すると逆効果になる恐れがあります。
社員旅行に参加できない、あるいは参加しない従業員に対する配慮も重要です。不参加者が不利益を被ったり、職場内で孤立したりすることがないよう、適切なフォローが求められます。たとえば不参加者に対して別の形での福利厚生を提供するなど、公平性を保つための工夫が求められます。
旅行期間中に発生する可能性のあるトラブルや事故は、企業にとって大きなリスクとなります。例えば飲酒による問題行動、交通事故、食中毒など従業員の心身に被害を及ぼすさまざまなリスクが考えられます。特に旅行中の事故や怪我に関しては、労災認定の問題もあるほか、社員旅行中の事故が業務上の事故と認定されるなど企業側の責任が問われる場合もあります。
社員旅行実施にあたっては、適切な旅行保険への加入が不可欠ですが、保険加入にはコストがかかり、これも企業の負担となります。また緊急時の対応マニュアルの作成や、現地での医療機関との連携など、事前の準備も必要となります。
普段の勤務時とは異なり、社員旅行ではアルコールを伴う交流の機会が増えるため、飲酒によるさまざまなトラブルが発生するリスクも高まります。セクハラ・パワハラ・アルハラといったハラスメントや、暴力行為などの問題が起こる可能性があり、これらは企業イメージを大きく損なうものであるため十分な対策が必要です。
現代社会では、従業員の価値観や生活スタイルが多様化しています。そのため全員が同じ形式の社員旅行を楽しめるとは限りません。たとえば以下のような理由で、社員旅行に消極的な従業員が必ずいると考えておいたほうがよいでしょう。こうした個人の価値観や生活スタイルの違いを考慮せずに画一的な社員旅行を実施することは、かえって従業員の不満を招く可能性があります。
・プライベートな時間を大切にしたい
・同僚や上司との長時間の付き合いに抵抗がある
・旅行よりも別の形での福利厚生を望んでいる
社員旅行の費用を経費計上する際は、その目的や内容によって適切な勘定科目を選択することが重要です。一般的に、社員旅行は福利厚生の一環として実施されることが多いため「福利厚生費」として計上されるケースが多くみられますが、旅行の性質や参加者の構成によっては「交際費」や「旅費交通費」として計上することも可能です。
社員旅行を福利厚生の一環として実施する場合、その費用は「福利厚生費」として計上するのが一般的です。福利厚生費は企業が給与以外に各社員に対して支出するものを指し、法定福利費と法定外福利費に分類されます。福利厚生費として計上することで、全額損金算入が可能である・消費税の課税対象外になるといったさまざまなメリットがあります。ただし福利厚生費として認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。
・社内規定に基づいて実施されていること
・従業員に平等に機会が与えられていること
・旅行の内容が社会通念上適切であること
・個人的な観光や遊興費用は含めないこと
・参加者の範囲や人数が限定的すぎないこと
・旅行の頻度や金額が過度にならないこと
社員旅行の性質によっては「交際費」として計上することも考えられます。特に、取引先や顧客との関係強化を目的とした旅行や、役員や幹部社員のみを対象とした旅行などが該当する可能性があります。接待交際費として認められれば、一定額まで損金算入が可能であり、取引先との関係強化に関する支出として明確化できる点がメリットといえます。ただし損金算入限度額が設けられている点と、消費税の課税対象になる点がデメリットであり、そのほか以下に注意が必要です。
・取引先や顧客との関係性を明確に示す必要がある
・社内の従業員のみの旅行は原則として交際費とは認められない
・交際費等の損金算入限度額を超える部分は課税対象となる
業務研修や視察などの要素を含む社員旅行の場合「旅費交通費」として計上することも可能です。この場合、旅行の目的が業務に直接関連していることを示す必要があります。全額損金算入が可能/業務関連の支出として明確化できる/従業員に対する課税の問題が生じにくいというメリットがある一方、以下に注意が必要です。
・業務との関連性を明確に示す必要がある
・純粋な観光や遊興の要素が強い場合は認められない
・研修や視察のスケジュールや内容を詳細に記録する
社員旅行を成功に導くためには、従業員の声に耳を傾けることが欠かせません。アンケートやヒアリングを通じて行き先や活動内容に関する希望を集め、多様な意見を取り入れることが大切です。若手社員から管理職まで幅広い年齢層や立場の従業員の意見を反映させることで、参加率の向上につながります。
また旅行の目的を明確にすることも重要です。単なる観光なのか、チームビルディングを重視するのか、または業務に関連した研修を含むのか…といった目的に応じて内容を検討する必要があり、従業員の意見を尊重しつつ会社の方針とのバランスを取ることが求められます。
繁忙期を避けて休日や連休を利用するなど、業務への影響を最小限に抑える工夫が必要です。また遠方の場合は移動時間も考慮し、実質的な滞在時間を確保することが重要です。行先の選定においては、従業員の年齢層や家族構成、趣味嗜好などを考慮し、幅広い層が楽しめる場所が適しています。国内旅行であれば温泉地や観光名所、アクティビティが充実したリゾート地などが人気です。海外旅行の場合は治安や衛生面にも十分な配慮が必要です。
社員旅行の予算設定は、会社の規模や経営状況、従業員の期待などを考慮して行う必要があります。過度に豪華な旅行は避け、適度な快適さと楽しさを両立させることが重要です。また費用負担の方法については、一般的に会社が全額負担する場合と、従業員にも一部負担してもらう場合があります。全額会社負担の場合は福利厚生としての性格が強くなりますが、従業員の自己負担を設けることで、参加意識の向上や不参加者への配慮につながることもあり、慎重に検討する必要があります。
参加者の安全を確保することは、社員旅行を実施するうえで最優先事項といえます。事前に旅行先の安全情報を収集し、必要に応じて現地の医療機関や在外公館の連絡先を確認しておくことが大切です。また緊急時の対応マニュアルを作成し、引率者や参加者に周知することも重要です。
保険加入も忘れてはならない重要なポイントです。国内旅行の場合は国内旅行傷害保険、海外旅行の場合は海外旅行保険に加入しましょう。団体割引が適用される場合もあるので、保険会社に相談することをおすすめします。
社員旅行の成功は旅行終了後のフォローアップにも大きく左右されます。参加者からのフィードバックを収集し、次回の企画に活かすことが重要です。アンケートやヒアリングを通じて良かった点や改善点を把握することで、よりよい社員旅行の実現につながります。
また、旅行中に撮影した写真や動画を社内で共有したり、旅行の思い出を振り返る機会を設けたりすることで、参加者の満足度を高め、職場の雰囲気づくりにも貢献できます。社員旅行の効果を最大化するためには旅行後のコミュニケーションも大切にしましょう。
従来の社員旅行とは一線を画す新たな取り組みとして、企業がリゾート施設と提携する方法が注目を集めています。この方式では、高級ホテルチェーンや温泉旅館グループと年間契約を結び、従業員が個人やグループで自由に提携先の施設を特別価格で利用できるようになります。以下のようなメリットがあります。
・従業員の都合に合わせて利用可能
・家族や友人との旅行にも適用可能
・企業側の旅行手配の負担が軽減
・年間を通じて利用できるため、混雑時期を避けられる
一方で、全従業員が一度に交流する機会が減るというデメリットも存在します。そのため、年に一度の全体会議と組み合わせるなどの工夫が必要かもしれません。
大規模な社員旅行に代わり、部署やチーム単位での小規模グループ旅行を推奨する企業が増えています。これにはより密接なコミュニケーションを図りつつ、業務への影響を最小限に抑える狙いがあり、以下のようなメリットがあります。
・より深い人間関係の構築が可能
・部署やチームの結束力強化
・業務スケジュールに合わせた柔軟な日程調整
・個々の興味や希望に沿った旅行内容の設定
一例として、営業部門であれば顧客訪問と組み合わせた出張旅行、クリエイター部門であればアイデア創出のためのリトリート合宿など、業務の特性に合わせた旅行が可能となります。

執筆者 山本瑠奈|株式会社スナックミー カスタマーサポート
百貨店デザイナーズブランド勤務やコールセンター勤務を経て、株式会社スナックミーでお客さまとのコミュニケーション窓口を担うカスタマーサポート担当。個人・法人のユーザーさまが安心してスナックミーをご利用いただけるよう、お困りごとに真摯に向き合うかたわらで、課題解決に役立つ「よくある質問」コンテンツの編集・更新や「福利厚生用語集」の作成も対応中。好きなおやつは『もっちりさつまいもバター餅』と『米粉パスタスナック』。

監修者 中川栞|株式会社スナックミー ライター・エディター
Web制作会社の管理職としてライターの指導・教育に従事したのち、株式会社スナックミーでコンテンツ制作を手掛ける、おやつライター兼エディター。安心・安全の「おやつ時間」の楽しみ方や、暮らしや職場におやつがある日々の豊かさ、福利厚生置き菓子の魅力を軸に、自社オウンドメディア『snaq.me magazine』の記事や商品パッケージのコピーライティングなどを担当。好きなおやつは『スナックミーのやさしいキャラメル』と『キングソロモンデーツ』。
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