アートは嫌なことから逃げて、逃げて、やっと辿りついた避難地──葉っぱ切り絵アーティスト・リトさん

2021/9/11

スナックミーのお菓子の箱を開く葉っぱ切り絵アーティスト・リトさん

小さい頃、わくわくしながら楽しみに待っていたおやつの時間。駄菓子屋で悩んだ末いつも選べなかったおやつがあったこと、友だちと自分の家とで出てくるおやつが違うこと。でも、意外とその思い出を誰かと共有したことってないかもしれない。

今スナックミーが気になるあの人にインタビューをしながら、子どものときのおやつ時間についてもこっそりお話しいただきます。今回は葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんにお話を伺いました。「葉っぱ切り絵」とは一枚の葉を切り抜いて作られる、とても繊細な切り絵です。

葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんの作品

リトさんの作品には、どれだけ眺めていても飽きない絵本のようなひとつの世界観があります。そして初めて見るのに懐かしく感じられ、温かい気持ちになります。なぜたった一枚の葉っぱで、ここまで人の心を打つ作品が作れるのでしょうか。そんな素敵な作品を作られるまでにどのような人生を歩まれていたのか、アーティストになるまでの道のりをお聞きしました。

働くことで気づいた自分の「苦手なこと」

──「葉っぱ切り絵アーティスト」になるまでどのように過ごされてきたのでしょうか。

葉っぱの切り絵を始めたのはつい最近の話なんです。こういったアート活動を始めるまでは会社員として9年間過ごしたんですが、人生の暗黒期でした。

――人生の暗黒期?

良かれと思ってやったらありがた迷惑な顔をされるし、かと言ってやらなければ指示待ち人間だと判断されてしまって、何が正解か分からない状態でした。三社経験したんですが、どこに行っても同じようなところでつまずいてしまうんです。

三社目では店長候補として採用され、最初は「優秀な人材が入ってきたぞ」と周りは期待をしてくれていました。その職場には若い子か年配の人しかおらず、フルタイムでお店をマネジメントできるようなメンバーがいなかったんですよね。だから飲食業の経験が10年近くある僕のことは即戦力だと認識されていたんだと思います。ただ、実際に働いてみたら、ひたすら怒られる毎日で。

――それはつらいですね。

怒られ続けていると、だんだん会社行くのも怖くなってしまうんですよね。ふと、ある日通勤途中に「きっと自分のように『要領の悪さに悩んでいる人』って、他にもいるんじゃないか」とスマホで色々調べてみたんです。そこで「発達障害」というのがあることを知りました。特徴の項目をチェックしていくとほとんどが当てはまり、これだと思ったんです。その後すぐに診断を受けに行って、やっぱりADHDであることが分かりました。

葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんのインタビュー風景

――分かったときはどんな気持ちでしたか?

仕事がうまくいかない原因が分かって、ほっとしましたね。ただ、会社で働き続けているうちはきっとこれまでと同じようなミスを繰り返してしまう…とも思ったんです。まだ次のことも決まっていなかったのですが、アルバイトすらうまくやれる自信もなかったため、会社を退職しました。

――そのあとすぐにアートを?

いや、仕事を辞めたときはまだアートで食べていこうなんて考えてもなかったです。生活するために働き口は見つけようと、まずはハローワークに通い始めました。ところが障害者雇用の枠は少なく、すぐに次の仕事が見つかるわけでもなくて。

――その枠の中でも自分に合う仕事を見つけるとなると、さらに選択肢が狭まりますよね。

本当にそうなんです。なかなか仕事が見つからない日々が続き、昼過ぎにワイドショーを観ていると情けない気持ちになりました。「こうやって自分が実家でタダ飯を食わせてもらいながらテレビを観ている間にも、友だちは汗水垂らして働いているんだよな」と。どうやったら自分も友だちと同じように社会の役に立って生きられるんだろう、と悶々と過ごしていました。

ハローワークでは自分に合った仕事がないことに気づき、その後は働くことに悩みを抱えている若者向けの就労支援施設に通うようになりました。けれど授業が退屈で、配られた紙の隅に機械のパーツやUFOのようなものを小さく落書きしていたんですね。そのとき、ふと思ったんです。こんなできそこないの絵でも、紙いっぱいに描いて一個一個塗り分けたらアートっぽく見えるんじゃないか、と。

――これなら自分の特性が生かせるかもしれない、と。

そうです。自分でもADHDのことを調べるうちに偏った集中力があると知り、それを何かに生かせないかなとちょうど考えていたところだったので。そこからアートの道を選び、作品を作り始めました。初期はこういったボールペンイラストを描いていたんです。

ボールペンで描かれたリトさんの初期作品

――わ〜!すごいです!

最初は反応が良かったんですが、だんだん決まったファンの方にしか見てもらえていないことに気づいたんですよね。もっと多くの人に届いてほしかったので、このあとも色々な表現方法を試しました。このボールペン絵の後はスクラッチアート、あと石粉粘土もやりましたね。さらにダイソーで買ってきた真っ白い紙袋に絵を描いて、何十枚って並べたらアートになるんじゃないかと思ったんですが、それも7枚くらいでやめてしまって。

自分の技術力の限界を突き詰めたところ…

――表現方法を変えるのはどのようなタイミングだったんですか?

戦略的なものではなかったです。次のアイデアが見つかったらそれを試してみる、の繰り返しでした。そんな中、あるときたまたま葉っぱの切り絵をやっている人の作品を見つけたんです。それが素晴らしい作品で「自分もやってみたい」という衝動が沸き起こり、葉っぱを拾いに行って。そしてその日のうちに切ってすぐ夜に投稿しました。

――自分の強みを生かす生き方ですね。今振り返ると「そういえば人より集中力があったな」と思うようなエピソードはありますか?

自分の好きなものと、そうでないものに対する集中力の差が大きい自覚は昔からありましたね。学生時代はオンラインで対戦できるゲームに毎日のめり込んでいたんですが、勝負にかけるための集中力は人一倍あった気がします。キャンパスライフはゲームしか思い出がないくらい(笑)。

葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんのインタビュー風景

――ゲームにかける思いが想像以上でびっくりしました(笑)。もう少し小さい頃の思い出はありますか?

小学生のときはとにかく『スター・ウォーズ』に夢中でした。ごっこ遊びをしたり、友だちと好きな場面を語り合ったり、ゲームをしたりしていましたね。映画って2時間くらいあって長いじゃないですか。さらに、ファンタジー映画は話が展開するまでの尺が結構とられていることが多いですよね。でも『スター・ウォーズ』は最初から最後まで目が離せなくて、ずっとわくわくした気持ちで観ていられました。

――たしかに子どものときの映画の2時間って、今よりとても長く感じました。先ほどのリトさんの『スター・ウォーズ』にかける思いをお聞きしていると、作品にしたくなりそうだなと思ったのですが…

実のところ、最初は自分の好きなものとか、思いついたままにとりあえずできそうなことをやっていたんです。それこそ『スターウォーズ』や好きな映画の一場面を切り絵にしていて。

――最初から今の作風だったわけではなかったのですね。

そうなんですよ。今のようなかわいい動物たちをモチーフにした作品を作り始めたのはずっと後になってからで、それまではずっと試行錯誤していました。たとえば海外にいる絶滅危惧種の動物たちにスポットライトを当てて、生態を紹介しながら切り絵で絵を見せる、とか。最近出版した『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』の中にもいくつか出ています。

葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんの作品

たとえばジュゴンはこんなでかい体して、海藻しか食わないんですよ(笑) 。しかも決まった種類の海藻だけ。だからジュゴンを飼ってる水族館はめっちゃ大変らしいです。

葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんの作品

このオオアリクイも不思議な生態で。一日に何十万匹かは食べるんですが、いろんな巣をちょこちょこ歩いて少しずつつまんで、ひとつの巣で全部は食べ尽くさないんです。

――初めて知りました!個人的にこういうお話すごく好きです。

面白いですよね。僕もそう思ってこれを作品にしてみよう、と。ところが、これもまた他の作品と反響の差はなくて。最終的に、これ以上細かい作品はできないぞというくらい自分の技術の限界を突き詰めた作品を作ったんですが、やはり反応があまりなかったんです。そこで初めて「自分の好きなモチーフを技術力で見せることにこだわり過ぎてたな」と気づきました。

共感されるストーリーに必要なものは?

葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんのインタビュー風景

――そこからどのように変わっていったのでしょうか?

葉っぱの切り絵だってことが一目で分かるように葉の形をもう少し残して、シンプルなストーリーにしよう、と方向転換しました。Twitterのテキストも140文字びっしり書いてたんですが、タイトルだけにしたんですよね。タイトルだけにするとどうなるかというと、自然とシンプルなストーリーになるんです。

――シンプルなストーリー、ですか。

先ほどのジュゴンの作品の場合、彼らが海藻しか食べないことって説明しないと分からないじゃないですか。

――たしかに。「ジュゴン」という生き物のことも知らない人だっていそうです。

そうですよね。説明文がなくてもタイトルだけで理解してもらうために、モチーフにするストーリーの内容も単純にする必要がありました。 まさにこの『葉っぱのアクアリウム』という作品はタイトルだけで投稿したものです。タイトルだけでも「葉っぱの中にある水族館で人々が楽しんでいるな」というのが伝わるようにしました。

葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんの作品

――ほんとうですね!この作品は分かりやすいストーリーへと方向転換されてからどのくらい経った頃に作られたのでしょうか。

ちょうどストーリーの作り方を変えた一週間後ぐらいのときのことなんです。これまでにないくらいたくさんの方から反応が集まり、「今まで足りていなかったのは技術力よりも、共感してもらえるようなストーリーを作ることだったんだ」と気づいたんですね。そうして今の絵本のストーリーのようなスタイルになりました。

自分のやりたいことを応援してくれる人がいる

葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんの作品

――「葉っぱ切り絵」という手法も作風も、試行錯誤された中で辿りついた表現手段だったんですね。リトさんはご自身の作品が評価されるまで活動を続けられていましたが、なかなか結果が出ないと途中でやめたくなってしまう人もいると思います。それでもリトさんが続けられたのはなぜだったのでしょうか。

その答えはシンプルで、他に逃げ道がなかったからです。僕がADHDじゃなく、アートを目指すために仕事を辞めていたのだとしたら、きっともうとっくに仕事に戻っていると思うんです。だけど、僕は嫌なことから逃げて、逃げて、やっと辿りついた場所だったので。避難地からまた大変な場所に戻っていくというのは、選択肢としてなかったんですよ。

――アートの世界が避難地だったと。

そうです。売れるか分からないアートを続けることも険しい道のりかもしれないけれど、アルバイトすらできるか自信がない自分がまた正社員に戻るのか、と考えるとそっちの方がよっぽど大変だなと。だからアートの道をやめなかった。 また親も優しいから、そんな自分を家に置いてくれていたんですよね。「家にお金は入れなくていいから、とりあえずあんたは好きなことやりなさい」と。

――ご家族の理解もあったんですね。

それがないと続けられないですよ。環境にも恵まれていたなと思います。

作品作りを支えてくれるのは好きなおやつ

――現在多忙な毎日を過ごされていらっしゃると思うのですが、息抜きする時間やほっとひと息着く時間はありますか?

僕、追い詰められないとできないタイプなんですよね。アートの道を選んだときもそうだし、葉っぱの切り絵も投稿し終えると、しばらくずっとYouTubeで動画を観たりゲームをやったりして何時間も潰してしまったりして。

今すぐ取りかかれば明日楽になるのに、結局朝方までスマホのゲームをやってしまって、次の日昼に起きて「あっやばい、早く作らないと」って追い込まれてやっとやる…みたいな(笑)。今朝も朝の6時くらいに作品完成させて、2時間撮影して、その足で今日仕事しに向かいました。それを毎日です。ずっと。

――追い詰められないとやれないのはすごく共感します…!では頑張ったごほうびにしているようなことや食べるものなんかはありますか?

それこそおやつですよ。

――え、本当ですか!!

スナックミーのお菓子の箱を開く葉っぱ切り絵アーティスト・リトさん

スナック菓子が大好きなんです。あとビスケットやチョコレート菓子もよく食べていましたね。

――小さい頃からおやつを食べる習慣はありましたか?

そうですね。弟がいたんですが、何でも分けるように言われてたんですよ。当時はおやつひと袋を全部自分で食べるのが夢でした。だから大人になったときに、自分のお金で好きなだけお菓子を買えるようになって、本棚に好きなチョコレート菓子を本みたいに並べていたことがありました。子どもの頃できなかった大人買いですね。机の棚の下とかにもざーっと同じお菓子を何個も並べたりしてました。

スナックミーのお菓子を食べる葉っぱ切り絵アーティスト・リトさん

――それは幸せな光景です…!今はどんなシーンで食べられることが多いですか?

作品を作って撮影行った後、喫茶店とかでコメントを返すのが日々の習慣なんですが、いつもその帰りにコンビニとかでお菓子を大量に買い込んで、次の作品作りの燃料にしています。受験の前にチョコレートを食べていたように、頭を活性化させようと思って。そのせいか、体重がめっちゃ増えました(笑)。

――もうひと頑張りするときにおやつをたくさん用意しておく気持ち、きっとユーザーさんの多くが共感していると思います(笑)。ぜひ今回お渡しするスナックミーのおやつも、作品作りのおともに楽しんでくださると嬉しいです!

今回ご取材をして、偶然にもリトさんがおやつ好きであることが分かり、同行してくださった書籍の編集者の方と一緒におやつ談義でしばらく盛り上がりました。

おみやげでお渡ししたものの一つである『まんまるクッキーメイプル』を試しに食べていただいたところ、「おいしい!メープル味のクッキーって意外とないですよね」と気に入ってくださったよう。スナックミーのことを知らない誰かと一緒に食べながら感想を伝え合う、そんなおやつの会ができたら楽しそうですよね。

リトさんの作品集『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』(講談社)で今回文中に出ていない作品もあるので、もっと見てみたい!と思った方はぜひお手に取ってみてくださいね。贈り物にも喜ばれそうです。

スナックミーは、誰もが安心して楽しめる「やさしいおやつ」を届けるブランドです。素材や作り手と向き合いながら、おやつの時間をより心地よいものにすることを大切にしています。
遊び心に満ちたおやつの時間のワクワクを、働くおとなの毎日にも。法人向けサービス『snaq.me office(スナックミーオフィス)』も展開しています。

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執筆者「中川栞」の顔写真

執筆者 中川栞|株式会社スナックミー ライター・エディター

Web制作会社の管理職としてライターの指導・教育に従事したのち、株式会社スナックミーでコンテンツ制作を手掛ける、おやつライター兼エディター。安心・安全の「おやつ時間」の楽しみ方や、暮らしや職場におやつがある日々の豊かさ、福利厚生置き菓子の魅力を軸に、自社オウンドメディア『snaq.me magazine』の記事や商品パッケージのコピーライティングなどを担当。好きなおやつは『スナックミーのやさしいキャラメル』と『キングソロモンデーツ』。

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